サプライチェーンリスク管理の重要性
~サイバー攻撃と地政学リスクの時代に企業が備えるべきこと~

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リスクマネジメント

1. サプライチェーンリスクの2つの観点
2. サプライチェーンリスク管理のポイント
3. サプライチェーンリスクへの備え

「自社は被害を受けていないのに商品が届かない」
「物流会社のシステム停止によって出荷ができない」
「原材料価格の高騰によって利益が圧迫される」

こうした事態は、もはや特別なものではありません。サプライチェーンが複雑化した現在、自社の外部で発生した問題が事業継続へ大きな影響を与える時代になっています。

近年はサイバー攻撃による物流停止や、国際情勢の変化による原材料価格の高騰など、企業活動に直接影響する事象が相次いでいます。
本稿では、企業が注目すべきサプライチェーンリスクと、その管理・対策について考えてみたいと思います。

1. サプライチェーンリスクの2つの観点

サプライチェーンリスクはさまざまな要因がありますが、本稿では企業への影響が大きい2つのリスクに着目します。
1つは、サイバー攻撃やシステム障害によって受発注や物流が停止するサイバーリスクです。
もう1つは、国際紛争や外交問題、エネルギー問題、通商政策の変更、自然災害などによって原材料調達や物流に支障が生じる供給途絶リスク(地政学・災害リスク)です。

いずれも、自社が直接被害を受けなくても取引先や物流事業者を通じて事業活動へ大きな影響を与える可能性があります。

サイバー攻撃リスク

2026年7月、冷凍食品事業大手のニチレイグループは、サイバー攻撃によるシステム障害により、冷蔵倉庫の入出庫や商品の出荷業務に支障が発生しました。

この他にも、アスクルでは2025年10月のランサムウェア攻撃により受注・出荷業務に大きな影響が発生し、2026年5月期第2四半期決算で約52億円の特別損失を計上しています。また、アサヒグループHDでは、2025年9月のサイバー攻撃により受注・出荷業務へ大きな影響が発生し、システム復旧や情報漏えい対応、供給停止への対応など、多額の費用負担が生じました。さらに、個人情報漏えいのおそれのある件数は約228万件に拡大しており、サイバー攻撃が企業活動全体へ及ぼす影響の大きさを示す事例となっています。物流業者などでもサイバーインシデントが発生しており、単なる情報システムの問題ではなく、サプライチェーン全体に影響が波及するケースが増加しています。

地政学リスク

企業活動への影響が懸念される事例の一つが、ホルムズ海峡を巡る情勢です。
日本はエネルギー資源や石油化学原料の多くを海外に依存しているため、航路の安全性が損なわれれば、原油やLNG、ナフサ等の価格上昇につながります。

その結果、燃料費や輸送費、包装材などのコストが上昇し、多くの業界で収益悪化や価格転嫁が発生します。

また、各国間の通商政策や為替変動、地震や台風などの自然災害も、サプライチェーンに大きな影響を与える要因です。
例えば、近年多発する自然災害に対しては、ハザードマップにて危険個所や被害予測を立て、災害時のリスク回避や避難行動を確認しておくことで、被害の軽減につながることもあります。

2. サプライチェーンリスク管理のポイント

高度に連携した現在のサプライチェーンでは、一部で問題が発生するだけでも、生産や物流の停止につながる可能性があります。

サプライチェーンの可視化

まず重要なのはサプライチェーン全体の可視化です。
・ 原材料供給先
・ 製造委託先
・ 物流事業者
・ クラウドサービス
・ 業務委託先
など、自社の事業継続に関わる重要な拠点や取引先を把握する必要があります。

重要取引先のリスク評価

取引先の選定においては品質や価格だけでなく、以下のような観点での評価も重要です。
・ 情報セキュリティ体制
・ BCP(事業継続計画)
・ 災害対策
・ 地域リスク

直接の取引先だけでなく、その先のサプライヤーや委託先も可能な範囲で把握し、継続的に情報を更新し、見直していくことが求められます。

3. サプライチェーンリスクへの備え

サプライチェーンリスクへの備えでは、自社だけでなく取引先のトラブルによる影響も想定する必要があります。

単一依存からの脱却

特定のサプライヤーや物流事業者への依存が高い場合、その企業の障害が自社の事業停止につながる可能性があります。
代替調達先や代替物流ルートをあらかじめ確保し、単一障害点をなくしておくことが重要です。

サイバーBCPの整備

BCPについては、以前にもご紹介させていただいたのですが(「企業のBCP対策 第1回 BCP対策の状況」:https://www.tokyo-kei.co.jp/useful/bcp1/)、これまでのBCPは主に予測不可能な自然災害が発生した場合を想定することが一般的でした。しかし近年は、サイバー攻撃やクラウドサービス障害への備えも不可欠となっています。

・ 自社がサイバー攻撃を受けた場合
・ 主要取引先がサイバー攻撃の被害を受けた場合
・ 重要物流事業者がサイバー攻撃により停止した場合
といったシナリオを想定した訓練や対応計画を整備しておく必要があります。

 

ニチレイの事例は、サイバー攻撃が企業単体の問題ではなく、サプライチェーン全体へ波及するリスクであることを示しました。また、ホルムズ海峡を巡る情勢は、原材料調達や物流の観点から企業活動へ大きな影響を与える可能性を示しています。
今日のサプライチェーンリスク管理とは、単なる取引先管理ではありません。物流、情報システム、原材料調達、地政学リスクなどを含めた事業継続戦略そのものです。
企業には、自社だけでなくサプライチェーン全体を視野に入れたリスクマネジメント体制の構築が、これまで以上に求められていると言えるでしょう。

 

株式会社TMRでは、43年にわたり培ってきた実績とノウハウをもとに、企業のリスクマネジメント体制の構築を支援しております。近年は、自然災害やサイバー攻撃、地政学リスクなど、サプライチェーン全体に影響を及ぼすリスクへの対応が求められています。
当社では、BCP(事業継続計画)の策定支援をはじめ、取引先を含めたリスクの可視化、内部通報制度の整備、不正リスク対策、サイバーセキュリティ対策など、企業の事業継続を支える幅広い支援を提供しています。
自社だけでなく、サプライチェーン全体を見据えた実効性の高いリスクマネジメント体制の構築について、お気軽にご相談ください。