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企業のBCP対策
第1回 BCP対策の状況
公開日:/最終更新日:
|リスクマネジメント
1.BCP策定の状況
2.BCP策定(運用)の事例
3.BCP対策のポイント
新型コロナ感染拡大により、社会生活や企業活動に多大な影響を与えたことは記憶に新しいですが、日本は災害大国とも言われており、大きな地震や豪雨、台風といった自然災害によるリスクも高く、こうした不測の事態への備えとして、企業において、BCP対策を行うことが推奨されています。今回はこのBCP対策についてお話したいと思います。
1.BCP策定の状況
①BCP策定とは
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称で、自然災害に代表されるような不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない対策や、万が一、中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針や体制、手順などを策定し備えることです。
②BCP策定率調査
2023年に2万社以上を対象に調査を行い、約1万1千社から回答を得られた調査結果では、BCPをすでに策定している企業は2割を下回っており、策定意向のある企業を合わせても5割に満たない状況です。
BCP策定率を企業規模で見ると、大企業が35パーセント以上であるのに対し、中小企業では15パーセント程度にとどまっています。
BCPの策定意向を持つ企業が想定しているリスクとしては、7割以上が地震や風水害、噴火などの「自然災害」を挙げており、次いで4割以上の企業が「設備の故障」と回答しています。他に「取引先の被災」や「物流(サプライチェーン)の混乱」も4割以上の企業がリスクとして回答しています。
また、リスク対策としては、「従業員の安否確認手段の整備」が約6割強で最も多く、「情報システムのバックアップ」、「緊急時の指揮・命令系統の構築」が続いています。大企業では従業員の安否確認や情報システムの管理などの備えを重視しているのに対し、中小企業では調達先、仕入先の分散や代替生産先、業務委託先、販売場所の確保といったサプライチェーンに関する備えが大企業と比較して高い傾向にあります。
③BCP策定率向上対策
中小企業庁はBCP策定率向上のため、「中小企業BCP策定運用指針」をホームページ上に公表し、普及セミナーを全国で開催している他、ガイドブックも公開しています。また、各種支援も行っており、相談窓口の設置、セミナーや講習会の開催、専門家派遣に加え、設備導入などに対しての優遇金利での融資も行っています。
2. BCP策定(運用)の事例
中小企業庁が作成した「中小企業BCP(事業継続計画)ガイド」というガイドブックには、1995年に発生した阪神淡路大震災において、同業種の中小企業でBCP策定企業と非策定企業との震災発生後の企業活動の差異の事例が掲載されています。以下にその要約を記載します。
①製造業(金属プレスメーカー)の事例
BCP策定企業
・アンカー固定によりプレス機転倒せず
・伝言ダイヤルシステムで安否確認を実施
・原料の代替調達、協力会社に代替生産の手配
・約1か月で復旧
BCP未策定企業
・ほぼ全てのプレス機が転倒
・ほとんどの従業員の安否確認ができず
・原料調達できず、生産できないため発注元が他社に切り替え
・3か月後に復旧するも規模縮小、従業員7割解雇
②建設業(ビル建設を行う工務店)の事例
BCP策定企業
・伝言ダイヤルにより安否確認を実施
・元請会社への連絡、現場確認を従業員がバイクで手分けして実施
・交代制の勤務体制で、地域の応急対策工事対応
・災害復旧工事等を受注
BCP未策定企業
・ほとんどの従業員の安否が確認できず
・大半の従業員が1か月間出社せず
・応急対策工事の要請あるも対応できず
・事業再建の目途立たず休業
③小売業(食料品スーパー)の事例
BCP策定企業
・棚を固定、商品散乱は小規模
・ボランティアの協力により店内整理および避難所への食料提供
・物流がストップした1週間は駐車場を緊急物資拠点に提供
・1週間後に仮営業を開始、1か月で本格営業再開
BCP未策定企業
・棚が倒れ商品が散乱
・従業員安否確認できず
・店内整理手つかずで、食品腐敗
・営業再開の目途が立たず従業員一時解雇
BCP策定企業は1か月ほどで営業を再開し、非策定企業は企業活動の縮小または休業を余儀なくされています。上記の事例からも初動で従業員の安否確認や関係各所との応対が行えるかどうかが非常に大切なことがわかります。こういった初動対応は、BCP策定が有効に働いた結果と言えます。
3.BCP策定のポイント
BCP策定では、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」の4つの切り口から対策を検討する必要があります。また、この取り組みは、伝達経路や体制など、他の企業リスク対策とも関連させることにより、リスクマネジメントの一つとして対策を行うことも有効です。各種管理規定や就業規則など内部統制も併せて検討し、運用できるようにするとより良いでしょう。
次回はBCP策定における検討事項や策定の具体的な手順などについて、お話させていただきたいと思います。
株式会社TMRでは、リスクマネジメント体制の構築支援を行っています。組織体制の最適化支援や内部通報制度、従業員研修による意識改革など、独自のノウハウと豊富な実績を元に効果的な支援を行っています。また、内部統制の運用支援も行っており、踏み込んだ内部監査サポートなど、企業の強みを損なわないことを視野に入れた客観的・多角的な第三者のセカンドオピニオンとしてアドバイスを行うことも可能です。
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