SNS炎上対策で陥りやすい「正しさ」の罠
~ブランド毀損を防ぐために必要な視点とは~

公開日:/最終更新日:
|リスクマネジメント

1. 想定外のSNS炎上はなぜ起きるのか
2. 企業が陥りやすい「正しさ」の罠
3. 想定外のSNS炎上の対応
4. 想定外のSNS炎上に対する平時からの備え

現在ではSNSの影響力の大きさは広く知られるようになり、企業側もSNSの有効活用やリスク対策を行うようになりました。しかし、企業側が正しい運用を行っている認識であっても炎上が発生し、ブランド毀損や企業イメージ悪化を招くことがあります。
SNSの炎上対策については様々な情報がありますが、本稿では、対策を講じている企業であっても陥りやすい「正しさの罠」と、それがブランド毀損につながる要因について考えてみたいと思います。

1. 想定外のSNS炎上はなぜ起きるのか

SNS炎上は、不適切な投稿や顧客対応上の問題だけで発生するものではありません。
誤解を招く表現や想定外の受け止め方、利用者への配慮不足と受け取られた企画など、企業側に明確な悪意や重大な落ち度がない場合でも、SNS上で共感や反感が広がることで、炎上に発展することがあります。

また、SNSでは問題そのものだけでなく、その後の企業の対応姿勢が評価対象となります。

一部の批判であったものが、多くの人に共有され、インフルエンサーやネットニュースなどに取り上げられることで議論が拡大し、結果としてブランド毀損や企業イメージの悪化につながるケースも少なくありません。

重要なのは、炎上そのものよりも、その後の対応によって被害が拡大することがある、という点です。

2. 企業が陥りやすい「正しさ」の罠

SNS炎上対策において初動対応の重要性は広く認識されています。しかし、対策を講じている企業であっても炎上を拡大させてしまう要因の一つが、「正しい対応」の捉え方にあります。

企業は問題が発生すると、まず事実関係を確認し、自社に問題がなかったかを検証します。これは当然の対応ですが、その結果として

法令違反はない
規約に基づく対応だった
社内ルールに沿っていた

という結論に至った場合、自社の正当性を説明することに意識が向き過ぎてしまうことがあります。

企業における正しさ

企業としての正しさは、法律や社会的ルールに基づく「論理的な正しさ」です。

企業は法的リスクの回避や損失の最小化を図りながら、社会のルールに則って問題解決や再発防止に努めることが求められます。そのため、事実関係や原因究明を整理し、自社の正当性の確認は重要なプロセスとなります。

こうした判断は企業経営において重要なものですが、一方でSNS上では、この「論理的な正しさ」だけでは十分に理解や共感を得られない場合があることを意識しておく必要があります。

社会が求めるもの

一方で、SNS上で多くの人が求めているのは、必ずしも法的・論理的な正しさだけではありません。
そもそもの想定外の炎上は、誤解や反感、不公平感、配慮不足といった感情をきっかけに拡散されることが少なくなく、企業の対応姿勢そのものが評価対象となります。

 

企業は法令や規約に従って行動し、再発防止に努めることを重視しますが、世間が求めているのは、それに加えて「配慮」や「誠意」、「声に耳を傾ける姿勢」であることも少なくありません。
特にSNSでは、企業や組織は「強い立場」、利用者や消費者は「弱い立場」として受け止められる傾向があります。
そのため、企業に落ち度がない場合であっても、弱い立場に置かれていると感じる人への配慮が不足していると受け取られれば、批判が拡大する可能性があります。

実際にSNS上では、企業に重大な違法行為や不正がなくても批判が拡大したケースは少なくありません。

例えば、エイプリルフール企画として発信した内容が不謹慎であると受け止められ炎上した事例や、広告表現が特定の属性に対する配慮を欠いているとして批判を受けた事例などがあります。
これらのケースでは、企業側に人を傷つける意図があったわけではなく、法律やルールに反していたわけでもありません。しかし、「誰かが不快に感じた」「配慮に欠けると受け止められた」という声が共感を集めたことで議論が拡大しました。
つまり、企業の意図や正当性と、社会が受け取る印象は必ずしも一致しないということです。

「正しい説明」が炎上を拡大させることもある

例えば、「規約に従い返金義務はありません。」とした場合、論理的にも法的にも正しい対応であっても、その伝え方次第では、「顧客に寄り添わない企業」「困っている利用者への配慮がない企業」と認識される可能性があります。

そのため、「ご不便をお掛けしたことについてお詫び申し上げます」 「今回いただいたご意見は真摯に受け止めます」といった配慮を示したうえで説明するかどうかによって、社会の受け止め方が大きく変わることがあります。

また、理解を得られるよう丁寧に説明した場合でも、難しい言葉を使った説明や、回りくどい謝罪などは、言い訳や責任回避と捉えられ、より反感を招くことに繋がりかねません。

企業としての正しさと、社会に受け入れられる対応は必ずしも一致しないことを理解しておく必要があります。

3. 想定外のSNS炎上の対応

SNS炎上への対応で重要なのは、自社の正当性を主張することではありません。

まず優先すべきなのは、
・ 誰が不満や不安を感じているのか
・ 何が問題視されているのか
・ なぜ批判が広がっているのか
を把握することです。

その上で、
・ 正当な指摘には真摯に向き合う
・ 誤解には丁寧な説明を行う
・ デマには冷静に事実を示す
といった対応が求められます。

また、企業として正しい対応だった場合でも、相手の立場や感情に配慮した伝え方を意識することが重要です。
SNS時代の危機管理では、自社の主張を理解してもらうこと以上に、まず相手の声に耳を傾ける姿勢が求められています。

4. 想定外のSNS炎上に対する平時からの備え

SNS炎上対策としては、
・ SNS運用ガイドラインの整備
・ 投稿前のチェック体制
・ モニタリング体制の構築
・ 緊急時の連絡体制整備
などが一般的に行われています。

しかし、それに加えて重要なのが、「社会がどのように受け止めるか」という視点を組織として持つことです。
特に管理職や経営層は、「企業として正しいこと」と 「社会から受け入れられること」が必ずしも一致しないことを理解しておく必要があります。

また、SNS上で少数の違和感や不満が発信された場合でも、それを軽視せず情報収集と共有を行える体制を整備しておくことが、炎上の拡大防止につながります。

SNS炎上は、不適切な投稿だけでなく、誤解や受け止め方の違い、配慮不足と受け取られる表現など、予期しない形で発生することがあります。
そしてブランド毀損を大きくする要因は、必ずしも最初の出来事そのものではありません。むしろ、その後の企業対応によって、問題が拡大するケースも少なくありません。
企業として正しい対応を行うことは重要ですが、SNS上では、それだけでは十分ではない場合があります。誰が不満や不安を感じているのかに目を向け、弱い立場に置かれていると感じる人への配慮や誠意を示すことが、企業への信頼やブランド価値を守ることにつながります。

SNS時代の危機管理においては、「企業としての正しさ」だけでなく、「社会がどのように受け止めるか」という視点を持つことが重要と言えるでしょう。
特に初動対応では、自社の正当性を示すことよりも先に、誰が不満や不安を感じているのか、どのような配慮が求められているのかを理解しようとする姿勢が求められます。それが結果として、ブランド価値と企業への信頼を守ることにつながるのです。

 

株式会社TMRでは、43年にわたり培ってきた実績とノウハウをもとに、企業のリスクマネジメント体制の構築を支援しております。SNS上では、企業として正しい対応を行ったつもりでも、その説明や姿勢が社会に十分受け入れられず、ブランド毀損につながるケースがあります。そのため、平時から危機管理体制を整備し、問題発生時に適切な初動対応を取れるよう備えておくことが重要です。
当社では、組織体制の整備や従業員教育、不祥事予防の仕組みづくりに加え、レピュテーションリスクを見据えた危機管理体制の構築を支援しています。
企業の信頼を守るためのリスクマネジメントについて、ご検討の際はお気軽にご相談ください。