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自社の内部統制は本当に機能していますか?
【第1回 内部統制とは?】
公開日:/最終更新日:
|リスクマネジメント
1.内部統制とは?
2.コーポレートガバナンスやコンプライアンスとの違い
3.内部統制の体制づくりに欠かせない6つの基本要素
1. 内部統制とは?
(1)内部統制の基本的な考え方
内部統制とは、「組織運営を適切にコントロールするための自立的な仕組み」のことです。英語ではInternal Controlと表されて、会社組織として経営戦略を適切に実行できるようにするために、社内の特定の組織に適用するものではなく、全社的に適用すべきルールです。顧客や取引先の支持を得ながら、いかに企業を発展させられるかという、経営のための仕組みと言えます。
この内部統制という考え方が注目されたのは、2000年代に金融機関や製鉄会社などの大手企業の経営陣が責任を問われる事態の発生や、鉄道会社による有価証券報告書の虚偽記載があったことなどに端を発しています。これを受けて2005年から2006年にかけて会社法および金融証券取引法が改正されて内部統制への規制が強化されました。
(2)内部統制に取り組む目的
内部統制の目的として、国は以下の4点を挙げています。
① 業務の有効性及び効率性
② 財務報告の信頼性
③ 事業活動に係る法令等の遵守
④ 資産の保全
内部統制が不十分な場合、財務諸表改ざんなどのマネジメント層の不正や個人情報の取扱いミスによる外部流出など、担当レベルでの不祥事といった不正・不祥事案が発生する危険性が高まり、訴訟等による損害賠償責任や法令・条例違反による業務停止となる場合もあり、企業イメージの低下や信用の失墜、更には取引先や顧客を失うことにもなりかねません。
反対に、内部統制がしっかり行われている場合、ルールが明確になることで法令を遵守したうえでの業務の効率化が図られ、従業員の働きやすさ・モチベーションの向上、仕事に対する心理的な余裕が生まれ、対外的なサポートもこれまで以上に充実させることが期待されます。そのため、対外的な信頼を得られ、優良企業としての認知度や企業価値の向上につながります。
加えて、財務状況を正しく可視化し、より戦略的な事業活動を推進することができることで、取引への好影響や金融機関や投資家の信頼が高まり、出資や融資も受けやすく、財務体質の強化も図れ、中長期的な発展や競争力の確立などにも期待できます。
2. コーポレートガバナンスやコンプライアンスとの違い
(1)コーポレートガバナンス
内部統制が経営のための会社組織の仕組みであることに対し、コーポレートガバナンスは株主等ステークホルダーとの関係を含んだ企業全体を規律するための仕組みとされています。株主等の利害関係者を主体として捉えるので、企業業績を株主等利害関係者の利益と合致させるための方法や制度として設けます。
ここで言うステークホルダーとは、株主に加えて、投資家、債権者、従業員、消費者等が該当し、コーポレートガバナンスは経営者の意思決定が適切か不適切かをステークホルダーが判断する基準とも言えます。
更に上場企業には「コーポレートガバナンスコード」が適用されます。「コーポレートガバナンスコード」は2015年に東証と金融庁が中心となり策定したステークホルダーによる統治を行うためのルールです。コーポレートガバナンスコードは、基本原則と一般原則及び補充原則といった73の原則から成ります。上場企業はこの基準を元に企業活動を行うことから、とても厳しいコーポレートガバナンスが求められていると言えます。
(2)コンプライアンス
内部統制の体制を構築するためには、「コンプライアンス」、「リスク管理」、「財務」が三位一体となって推進され、監査役等による内部監査を通して評価され、評価結果を元に改善していきます。よってコンプライアンスは内部統制で管理する対象のひとつと言うことができ、法令遵守や社会道徳的なルールとしてコンプライアンス規程を設けることが一般的となっています。資産の保全、財務諸表等の報告、業務の効率性・有効性などリスク管理や財務管理を考慮し、内部統制の目的に合致するものが求められ、外部専門機関による不正・不祥事発生時の調査、下請け企業や取引先へのアンケート、内部通報制度構築など業務健全性を担保するため、より踏み込んだ管理を行う企業も多々あります。
内部統制では明文化されたルールとして、就業規則だけでなく、コンプライアンス規程の他、組織規程や稟議規程、販売管理規程、情報システム管理規程、文書管理規程や内部監査規程などが必要となります。
3.内部統制の体制づくりに欠かせない6つの基本要素
内部統制の体制づくりに求められる基本的な要素として国は下記の6つを挙げています。企業組織が内部統制の目的を達成するには、これらの要素すべてが適切に整備され実行されることが重要と指摘しています。
(1)統制環境
組織が保有する価値基準や制度を総称したものです。企業組織の行動や強みはトップの意向や姿勢を反映したものとなるケースが多くみられ、経営判断にも影響を及ぼすため、この統制環境という要素はこれから示す他の要素にも影響を与えかねない最も重要なものと考えられています。
(2)リスクの評価と対応
組織の目標達成を阻害する要因です。天災や競争激化、為替変動といった外的要因リスクから、情報システムや会計処理の不正、個人情報の漏洩といった内的要因に起因するリスクまでの幅広い範囲を含みます。
(3)統制活動
経営者の指示が適切に実行するために定められるルールと手続きです。企業の活動に発生するリスクを減らすためには、仕事内容を分担し体制を整備することが重要です。具体的には取引の承認と記録、資産の管理をそれぞれ別の部署で担当することで相互牽制を働かせるといったケースが挙げられます。
(4)情報と伝達
必要な情報が処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを指します。必要な情報が伝達されるだけでなく、受け手に正しく理解され、その情報を必要とする組織内の全ての者に共有されることが重要と考えられています。
(5)モニタリング
内部統制の体制が有効に機能しているかどうかを継続的に評価する仕組みです。モニタリングでは内部統制の体制を継続的に監視、評価されることが求められます。業務に組み込まれる日常的モニタリングから、外部専門家など独立した視点からチェックを行う独立的評価があります。
(6) ITへの対応
IT対応の面で適切なルールや手続を決めて適切に対応することを言います。ほぼ全ての企業組織がIT抜きでは業務を遂行することができなくなっている現状から、業務実施のプロセスでITに対し適切に対応することが、内部統制の体制維持に必要不可決と考えられています。
第2回では、「内部統制の体制づくり」について、掲載する予定です。
株式会社TMRでは、内部統制の体制構築支援を行っています。外的要因リスクのひとつである倒産などによる焦げ付きを発生させないための取引先の企業調査情報なども含め、しっかりしたルールで与信管理を運用できる体制づくりのお手伝いはもちろん、プライバシーを十分に考慮した顧客からの相談窓口設置や、内部統制のモニタリングで必要となる内部告発などを含む従業員用の相談窓口など、各種相談窓口の設置および運営なども承っております。踏み込んだ内部監査サポートとして、不正・不祥事発生時の現場調査や取引先アンケートによるヒアリング調査、内部通報制度の構築支援などの他、内部統制のルールを実現するための施策や規定づくりなどについて保有するノウハウの他、これまで長年にわたり行ってきた企業調査の実績による知見も含めた支援をご提供することが可能です。
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