第三者割当増資に伴う不公正ファイナンスの横行と反社会的勢力調査の必要性

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リスクマネジメント反社

 

1.反社会的勢力の活動の不透明化による規制強化
2.証券市場における不公正ファイナンスの横行
3.未調査で第三者割当増資を行いかけた危険な事例
4.第三者割当増資に伴う外部調査機関の必要性

1.反社会的勢力の活動の不透明化による規制強化

近年、反社会的勢力は、組織実態を隠ぺいし、活動形態においても企業活動を装うなど、不透明化を進めており、証券取引等を通じて資金獲得活動を巧妙化させています。多くの企業が反社会的勢力と一切の関係をもたないことを掲げていますが、反社会的勢力と認識しないまま結果的に経済取引を行ってしまうリスクが高まってきています。

こうしたリスクに伴い、第三者割当によるファイナンスを取り巻く環境が大きく変化しています。具体的には、東京証券取引所が平成22年8月に有価証券上場規程を改正して第三者割当増資に関する開示規制を強化しました。この開示規制を皮切りに、他の証券取引所でも同様の改正を行い、国もこれに合わせるかたちで企業内容等の開示に関する内閣府令を改正しています。

2.証券市場における不公正ファイナンスの横行

このように規制が厳格化されてきた理由は、不公正な取引を行う、いわゆる不公正ファイナンスの事例が多く発生したためです。不公正ファイナンスとは、有価証券の市場における上場企業を、おカネを流通させる「箱」のように利用して、調達資金を不正に流出させたり、相場を操縦したりするなどの不公正な取引を行い、不正な利益を得たりすることを指します。

不公正ファイナンスが行われると、対象企業の株式や企業そのものの企業価値が大きく毀損し、既存株主の利益は害さることになりますが、事業が逼迫し資金需要が非常に強くなってしまっている企業では、目先の出資金に目が眩んで判断力が低下してしまうようなケースもみられます。

3.未調査で第三者割当増資を行いかけた危険な事例

某上場会社は、資金繰りが逼迫した状況から、第三者割当により資金調達することを検討し、経営陣の知人であったアレンジャー(金融仲介者)を通じて、あるファンドの紹介を受けました。切迫した状況から、当ファンドが反社会的勢力等と関係がないことや各組合員の属性について客観的に裏付ける資料の提出を求めないまま、アレンジャーからの簡易な口頭説明の確認にとどまっていました。

ファンドの窓口である担当者の経歴や人物像も好印象であったことも寄与して、同社代表はこの人物を信用してしまいました。一日でも早く資金調達を実施しないと時価総額基準に抵触する恐れもあったため、十分な信用調査を実施せず、同ファンドに割当てを行うという方針をいったん打ち出しました。

ある取締役の強い意向から、割当て実施の直前に専門調査機関を通じて調査をしたところ、反社会的勢力に該当するという結果が出ていました。慌てた他の役員が本件を中止するよう代表者を強く説得したため、結局同ファンドに対する割当てを何とか避けることができました。

4.第三者割当増資に伴う外部調査機関の必要性

時価総額基準や債務超過などの上場廃止基準に抵触するおそれのある企業は、一刻でも早く資金調達を実現する必要があると考え、焦りから増資の割当相手は誰でも構わないと考えるケースが現実的にはみられます。上場廃止になるなどのデッドラインが迫る状況において、割当予定先の調査に時間が割けず交渉を進めてしまうケースや調査結果が「黒」と出ているにもかかわらず進めようというケースもあります。

万が一、反社会的勢力からの第三者割当増資を行った場合には、企業そのものを乗っ取るリスクなど、従業員や株主を含めた企業全体に多大な被害を生じさせるリスクが非常に高くなります。

また、監督官庁からは厳しい指導が入ることが予想されます。もし反社チェックを行っていなかったという事実が発覚すると、さらに厳しい処罰を受ける可能性があります。このような理由から、反社会的勢力との関係遮断は企業防衛の観点からも必要不可欠です。

第三者割当増資に伴う企業取引では、専門調査機関を活用した調査が非常に有効となります。専門調査機関に依頼する企業調査は増資に伴うリスクヘッジを図る非常に有効な方法です。

 

TMRが実施している反社チェックを含む反社会的勢力調査の手法は、昭和52年2月の創業以来、永年培った調査技法および日々各方面より収集した情報を精査・分析した上で、その結果を具体的に規定フォームに基づき書面を持って報告する事で東京証券取引所に上場している各社の第三者割当引受人の審査を数多く受託しています。