お役立ち情報
1. 高年齢者雇用の措置のメリットデメリット
2. 高年齢者雇用のリスク
3. 高年齢者雇用のリスク対策
高年齢者雇用確保措置の経過処置期間が2025年3月31日に終了し、2025年4月1日からは希望者全員に対し、65歳までの雇用機会の提供が義務付けられています。具体的な措置として、「定年制の廃止」、「65歳までの定年引き上げ」、再雇用なども含む「継続雇用制度の導入」の3つの中からどれか1つを必ず実施する必要があります。また、努力義務として、同様に70歳までの継続雇用も求められています。
少子高齢化社会に伴い、高年齢者の労働力の活用は有効である一方、必要とする技術や知識を持つ人だけでなく、希望者全員を雇用する義務はリスクでもあります。また、被雇用者も雇用条件などによって、在籍し続けるか退職するか、退職して新たな職場に移るかなどを選択することが可能なため、雇用側は必要な人材を確保できるよう考慮することも必要です。
1. 高年齢者雇用の措置のメリットデメリット
企業が高年齢者を継続雇用する主なメリットとしては以下のようなものがあります。
・ 経験や知識、人脈などを継続して活用することや継承ができること
・ 採用コストを抑えられること
・ 国の補助金制度を利用できること
また、主なデメリットとしては以下のようなものがあります。
・ 加齢により業務遂行能力が低下していても雇用を継続しなければならない
・ 建設業や製造業の労災事故防止対策等、高齢者を考慮した安全対策や職務内容変更などの対応が必要となる
・ 世代交代が進みにくくなる可能性がある
上記のようなメリットデメリットに加え、「定年制の廃止」「65歳までの定年引き上げ」「継続雇用制度の導入」の選択肢それぞれのメリットデメリットには以下のようなものがあります。
定年制の廃止
メリット
・ 熟練者を長期で維持でき、安定した業務を継続できる
・ 就業規則の変更には様々な検討が必要だが、年齢による役職制限や賃金規定を設けることなども合わせて行うことはできる
デメリット
・ 能力に関わらず、本人の希望がある間は雇用を継続し続けなければならない可能性がある
・ 年功序列制の場合などは、人件費の負担が大きくなる可能性がある
65歳までの定年引き上げ
メリット
・ 就業規則の変更が比較的シンプルで、定年が決まっているため計画的な人事運用が行いやすい
・ 社員にも分かり易く、変更点も少ないため、制度変更によるトラブルがおこりにくい
デメリット
・ 退職金の増加や人件費の負担が大きくなる可能性がある
・ 年齢以外の就業規則の変更があまりない場合など、高年齢層が上位の役職にとどまり続ける可能性がある
・ 定年年齢を下げることは労働条件の不利益となる可能性が高いため、一度決めたら下げることは難しくなる
継続雇用制度の導入
メリット
・ 再雇用制度により正社員以外も含め、契約形態や契約条件を変更することができる
(但し、原則として労使間の合意は必要です)
・ 人件費を抑えて人材不足を補える可能性がある
・ 勤務延長制度では、年契約など期間を区切って契約できる
デメリット
・ 優秀な人材が継続雇用を辞退し、早期退職する可能性がある
・ 同一労働同一賃金が法制化されており、職務を継続する場合は再雇用であっても賃金差が出ないようにする必要があるなど、契約条件については法制度に則った変更を行わないと大きな問題となる
・ 継続雇用制度の場合でも雇用の拒否は解雇理由相当の理由がないと原則できない
・ 該当者以外の一般社員から、待遇に対して不満がでることなどがある
・ 勤務延長制度で5年以上勤務した場合、無期転換ルールにより正社員として継続して雇用しなければならない可能性があり、その場合、定年制を廃止した場合と同様の対応が必要となる
被雇用者のメリット/デメリット
メリット
・ 年金支給開始時期まで仕事を継続し収入を確保することができる
・ 早期退職時の退職金優遇などを含め自分の都合に合わせた退職や継続の選択ができる可能性がある
デメリット
・ 高年齢者雇用措置は企業ごとに決まっており、個人で選択はできない
・ 退職したくても継続しなければ退職時の待遇が不利になる場合もある
・ 役職を外れることや職務内容の変更、収入減など、モチベーションを維持できない可能性がある
2. 高年齢者雇用のリスク
人件費高騰や高年齢者を意識した安全義務対策などの他、若年層の採用が困難となることや、一般社員からの高年齢者の待遇に対する不満の発生など、高年齢者雇用に伴い発生するリスクとして以下のような内容を検討する必要があります。
体力や健康関連のリスク
・ 業務遂行能力の低下や病気等による欠勤増加など
・ 労働災害の発生率が上がる
組織・人事関連のリスク
・ 賃金や退職金、役職、評価など、就業規則を適切に変更しなければ、当該者だけでなく一般社員のモチベーションなどにも影響する
・ 人件費の高騰に伴い、若年層の雇用が困難となる
・ 世代交代が停滞してしまう
技術・環境関連のリスク
・ 技術継承先の若年層が足りなくなることや、高年齢層が多いことによりデジタル技術等の導入が遅れるなどの停滞がおこってしまう
・ 高年齢層社員の増加により、現場作業なども高年齢層が対応せざるを得ない環境となってしまう
3. 高年齢者雇用のリスク対策
これらのリスクに対し対策を行う必要があると同時に、現在の65歳までの雇用義務が70歳までの雇用義務に更に延長される可能性なども踏まえ、変化に対応できる組織体制の構築も必要と言えます。
健康管理と安全対策
・ 定期的な健康診断の他、高年齢者向けの安全講習や健康相談窓口の設置など、教育や相談が行える環境づくり
・ 体力的な負担を加味し、労働時間や休憩時間等の配慮、交代制や分担制などによる負担軽減などによる作業内容の見直し
・ 作業場の転倒・転落防止策の強化や機械の自動化など、設備面の改善対策
(厚生労働省が「エイジフレンドリー補助金」を出し推進しています。)
人事や組織の対策
・ 賃金の高止まりなどの人件費高騰を防ぐための就業規則の策定や再雇用制度の雇用形態や賃金規定など、人材流出を防ぎつつ人件費高騰を抑えるための対策
・ 貢献度と賃金の乖離や評価の不公平が発生しないようにする社内制度や評価制度の見直し
・ 知識や技術を役立て若年層を育成できるよう高年齢層が適切な役職、役割を担える組織体制の構築
技術や環境の対策
・ 高年齢層の知識や技術をデジタル化し共有できるシステムの構築や機械化等による自動化での対応
・ 作業手順の見直しやアウトソーシングなどによる作業効率化により、高年齢層が効率よく仕事を行える体制づくり
・ 技術継承の意識向上や手法、安全確保や作業効率化など、高年齢層の力を発揮できるようにする高年齢層向けの教育の実施など
いずれの高年齢者雇用確保措置を行う場合でも、上記のようなリスクとその対策が必要となります。これらのリスク対策を行わず、高年齢者雇用確保措置だけを行った場合、人件費の高騰や組織内の不満増加、モチベーション低下などを引き起こす可能性も高く、経営リスクへと発展する可能性があります。
これらのリスク対策は、高年齢者雇用確保措置のためだけに行うのではなく、他のリスク対策とも合わせて行うことで、効率的にコスト負担を抑え、かつ効果的な対策を行えると考えられます。また、既に努力義務となっている70歳までの継続雇用も見据え、継続的に改善を行える体制が必要となるため、リスクマネジメントの一環として管理することが望ましいと言えます。
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