職場の心理的安全性

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リスクマネジメント

1.心理的安全性とは
2.企業存続に関わる事例
3.心理的安全性低下の改善

皆さんは「心理的安全性」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?簡単に言うと心理的安全性とは、怖がらず、恥ずかしがらず、自然体の自分でいられることを指します。

この心理的安全性が高い職場は成果が出やすく、低い職場では様々な問題を発生させる可能性が高いと考えられています。場合によっては企業存続に関わる問題となることもあり、現代の企業経営においては非常に大切な管理項目となっています。

今回はこの「心理的安全性」についてのお話をさせていただきたいと思います。

1.心理的安全性とは

(1) 心理的安全性の研究とGoogleの発表

「心理的安全性」は、ハーバード大学で組織行動学を研究しているエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱された概念で、エドモンドソン教授の研究では、心理的安全性が高いほど効率化され成果がでやすく、組織内の人間関係が深まるという結果がでており、心理的安全性が低くなる原因となるのは、“このように思われたくない”と感じる4つの不安だと指摘しています。

4つの不安とは、無知(IGNORANT)、無能(INCOMPETENT)、邪魔(INTRUSIVE)、ネガティブ(NEGATIVE)を指します。

2015年に大手検索エンジン運営企業のgoogleが「チームの生産性・パフォーマンスを高める最も重要な要素は、心理的安全性である」と発表したことにより注目されるようになりました。

(2) 心理的安全性が低い環境の特徴

心理的安全性が低い環境では、個人が環境に適応しようとする傾向にあることが特徴として挙げられます。具体的には以下のような環境にも疑問を持たなくなります。

・ 質問や確認がしにくく、自発的なコミュニケーションが少ない
・ ミスやトラブルを認知しても気付かないフリや隠蔽する傾向がある
・ ミーティングで上司や一部の従業員に発言が集中している
・ トラブル時に責任を追及するような発言が多い
・ 意見やフィードバックを求める機会がほとんどない

(3) 心理的安全性が低い環境のリスク

このような環境で発生する問題として以下のようなものがあります。

・ 本業の成果より個人の印象操作に意識が向く傾向がある
・ モチベーションが低下しやすく、結果として生産性が低くなり離職率が上昇する
・ 改善や疑問などの意見が出にくく、停滞した環境に陥る
・ 隠蔽や不正によるトラブルや事故が発生しやすい

特に隠微や不正が恒常化してしまっている場合、自浄化が難しいため内部告発により発覚し、企業存続に関わる事態となりえます。

2.企業存続に関わる事例

心理的安全性が低い状態に陥った環境の分かり易い事例を3つご紹介します。

(1)極端に心理的安全性が低い事例

中古車販売大手企業が不正な整備業務を行い、損害保険会社に水増し請求を行っていたことなどが明るみとなり大きなニュースとなりました。

・ 店舗の利益や中古車の買い取り台数に過剰なノルマを課していた
・ ノルマ未達の場合は非常に厳しい追及が日常的に起こっていた
・ 成績が悪い社員は名指しで攻められ、更迭や左遷も当たり前だった

上記だけでも心理的安全性が極端に低い環境であることが伺えます。この結果、各人が数々の不正で対処せざるを得なかったことが想像できます。また、同社は平均勤務年数が5年未満と短く、離職率も非常に高いことが判明しています。

(2)隠ぺいの事例

大手自動車会社でリコール隠しが行われていたことが、内部告発を受けて運輸省が監査したことで発覚しました。しかし、4年後には更なるリコール隠しが発覚し、グループ企業から救済される形で倒産は免れていますが、大企業が自力では存続できないほどの事態となりました。

本来、国に報告しなければならない重要不具合情報を1977年から故意に隠蔽していたことが発覚しており、長年に渡り隠ぺい体質が定着していたことが伺えます。

(3)不正の事例

2017年に大手製鋼所で、金属材の強度データなどの検査データ改ざんが発覚しました。自動車や航空機、鉄道などにも利用されており大きな問題となりました。

当時の中国企業の台頭による危機感からコストや品質面に対して上層部からの要求が大きくなり、現場がデータの改ざんを行うことで対処し、それがルーティン化したことがわかっています。

不正を行うことが解決策となっていることもあり、新たに配属された人などが疑問に思っても意見は言いにくい環境にあったことが容易に想像できます。

3.心理的安全性低下の改善

これらの事例からも心理的安全性が低い環境では、不正を不正と言えず、疑問や改善を投げかけることができず、逆に自身がその環境に合わせ適応していく傾向にあることがわかります。

心理的安全性が低下している場合、客観的な目で見なければ認識できないことが多く、問題となる組織だけで改善を行うことは、非常に難しいと言えます。

上記の事例のような大規模な不祥事にまでは至らなくとも、同様の小さな問題を抱えている企業は多く存在すると考えられます。心理的安全性の大切さを今一度認識し、第三者目線で自分の所属する組織を俯瞰し、問題がある場合は芽が小さいうちに改善することが大切です。

 

株式会社TMRでは、心理的安全性の客観的な評価や心理的安全性が低い職場を改善するための対策をご提案することが可能です。通報者保護にも配慮した内部告発を含む従業員からの苦情や意見に対し、産業カウンセラー、心理療法士、公認不正検査士、行政書士等の専門家と連携し、熟練したオペレータが速やかな対応を行う従業員相談窓口の設置についてもご相談ください。これまで数々の対策を行ってきた実績に基づくノウハウをご提供いたします。