1.経営危機や業績不振につけこまれたケース

2.リスクの管理に取り組むことの必要性

3.リスク管理として行う反社会的勢力に対応するための事前調査

1.経営危機や業績不振につけこまれたケース

A社は新規事業分野に進出した後、順調に業績を伸ばしたものの、数年のうちに赤字決算に転落し、経営者は粉飾決算に手を染めるまでに陥ってしまいました。そして、それを反社会的勢力に狙われ経営権を奪われてしまいました。

経営権を奪い、副社長として暗躍した人間は実は反社会的勢力の幹部であり、従前から企業の乗っ取り屋として行動していたようでした。事後に分かったことですが、乗っ取った会社を使って別会社の不要機器などを買い取らせ、資産を搾取していました。

上場直後のベンチャー企業でもこういった例が多数あり、特に注意が必要です。上場した後に思ったより業績が振るわず焦っている場面で乗っ取られてしまうというものです。乗っ取る側からみると上場直後の企業はかなりねらい目となります。IT系のベンチャー企業などで、時流にのり突然ヒットしたことで経営レベルとしてはやや未熟な体質のまま上場したが、早々に流行りが去ると業績や株価が悪化して、反社会的勢力の格好のターゲットにされてしまい、気づけば乗っ取られてしまっていたという事例などがあります。

新興市場ベンチャーに限らず、新型コロナウイルスによる影響など、外部環境の急激な変化に伴う業績不振などのケースも標的にされやすい例のひとつと考えられています。

地方都市で、ミセス向けに衣類小売を行う某企業は地域ショッピングモールなどに出店するなど多店舗化を図り、最盛期には20店舗以上の出店をしていました。扱う製品は流行を先取りすることで好評を博していましたが、その半面、経済動向に左右され易いという課題もありました。大型店の新規出店やインターネット購入の市場拡大などの影響を受けて業績は近年、縮小傾向で推移していました。そのような折、新型コロナウイルスの感染拡大で来店客が激減、喫緊の資金繰りを圧迫して店舗縮小戦略を急速に進めざるを得ない状況に陥っています。

観光地に立地する某老舗旅館は近年、需要が高まるアジアからのツアーの受け入れに注力して多く観光客が利用していました。こうしたなか、急拡大した新型コロナウイルスの影響で団体ツアーのキャンセルが相次ぎ、海外客の大型連休に見込んでいた売上需要が全く確保できなくなり、従業員の休業対応とともに運転資金の確保に奔走せざるを得ない状況になっています。

このように、経営危機や業績不振に伴い、資金繰りの行き詰まった経営者は、延命のための資金調達の際に反社会的勢力に入り込まれてしまう傾向が多く見られます。平時に行う経営判断や業績が好調な時に比較して、中長期的かつ冷静な意思決定ができず、短期的で誤った考えに陥りがちです。外部からの資金調達など、重要な経営判断に際しては、より入念に検討することに加えて、慎重な対応を検討する経営姿勢が求められます。

2.リスクの管理に取り組むことの必要性

リーマンショック後、緩やかな経済回復基調にあった時期の2016年版中小企業白書では、企業の経営活動におけるリスクを『事業活動の遂行に関連するリスク』として紹介しています。

『事業活動の遂行に関連するリスク』を具体的にみると、「①モノ、環境等に関する災害リスク」、「②情報システムに関するリスク」、「③商品の品質に関するリスク」、「④コンプライアンスに関するリスク」、「⑤財務報告に関するリスク」の5つから構成されています。

平素から、これらのリスクを未然に防ぐ体制を築いていくことは企業が事業を継続するための必要な要件であり、新たに発生するリスクに備える取り組みが不可欠です。

前段に挙げた新型コロナウイルスが経済に与える影響は、「モノ、環境等に関するリスク」のひとつであると言えます。こうした世界経済を席捲するような新しい感染症に対して、どう企業がリスクを管理していくべきかという点は、今後中長期をかけて議論されるべき課題となることは間違いないでしょう。

一方、近年の国内経済を振り返ると、令和元年に発覚した闇営業問題や金融機関による半グレ(準暴力団)関連融資問題、遡れば平成25年に発覚したメガバンクによる反社会的勢力への融資問題などは、反社会的勢力排除という企業を取り巻く潜在的な経営課題を浮き彫りにした企業事例のひとつです。『事業活動の遂行に関連するリスク』の中でも特に「コンプライアンスに関するリスク」の管理に企業が取り組むことの必要性を思い知らされる大きな契機となった出来事でした。

3.リスク管理として行う反社会的勢力に対応するための事前調査

日経テレコンや帝国データバンクといったサービスで、過去の雑誌や新聞、インターネット記事などで当該企業についての情報を調査することができます。取引先の企業が事件を起こしていないかなどを確認することが必要です。また大企業を対象として調べる場合、外部専門機関のデータベースを調べると、反社会的勢力と関与を隠して活動を行うフロント企業かどうかを確認することは可能です。

しかし、業歴の浅い会社、あるいは当該企業の取引先や資本関係までは調べる事ができず、経営者個人や一部従業員などの一個人が反社会的勢力に関与しているかまで突き止めることはできません。さらに、グレーで判断のつきにくい新興勢力の台頭が特に近年は目出ち、単純な調査活動では反社会的勢力なのかの判断が難しいケースが増加しつつあると言えます。

このように反社会的勢力に対する事前調査を取り巻く環境が高度化、複雑化していると考えられる現代において、企業がリスク管理として反社会的勢力への対応を行うにあたっては適切な専門調査会社を利用することは有効な方法のひとつです。反社会的勢力に対して、一定の警戒心を持ちながら取引先企業をしっかりと嗅ぎ分け、万が一、怪しい場合には徹底的に調査する、といった事前調査に対する経営姿勢は企業が行うリスク管理として必要不可欠な取り組みと言えます。