新型コロナウイルス感染拡大から必要性が高まる建設業の与信管理

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リスクマネジメント信用調査

 

1.新型コロナウイルス感染拡大の影響で急速に高まる建設業の与信管理業務
2.建設業における外注先・仕入先に対する与信管理の必要性
  (1)取引リスクをマネジメントする与信管理
  (2)建設業に必要とされる外注先への与信管理
3.建設業が行う与信管理のポイント
  (1)与信管理で行う2つの業務
  (2)建設業が行う与信管理で留意すべきポイント

1.新型コロナウイルス感染拡大の影響で急速に高まる建設業の与信管理業務

新型コロナ感染拡大のため、2020年4月から首都圏を対象に緊急事態宣言を発令されました。緊急事態宣言の発令と同時に西松建設が対象地域全ての建設作業をストップさせると発表したことから始まりました。

収束することのない新型コロナの感染拡大の影響から、その5日後には清水建設が工事ストップを発表、続く形で戸田建設、大林組、JR東海も工事の中止の発表をしたことから、建設業界全体に波及していきました。中止を受けた工事現場は、わかっているだけでも数千か所あると言われています。

こうした大手ゼネコンが行う工事の中止により、中小工事業者はじめ建築資材業者に大きな影響がでています。建設業に従事している人数は全国で数百万人にものぼります。その大半を占めるのは小規模事業者であり、元請け会社からの仕事が無くなれば、収入減から資金繰りが悪化し、倒産に至る危険性もあります。新型コロナウイルス感染拡大の影響はもちろん、従来から経営者が高齢化している状況も重なり、工事中断による決済遅延に伴う資金繰りへの影響は否めず、持続化給付金による延命効果が一巡する10月以降、必然的に倒産に追い込まれる企業も増えると見込まれています。

2.建設業における外注先・仕入先に対する与信管理の必要性

(1)取引リスクをマネジメントする与信管理

掛け売りは作業や納品物から遅れてお金の支払いが発生することから、一定のリスクが伴います。支払期日までに相手が支払われない延滞債権の発生に加え、支払期間に相手が倒産したらそのまま代金回収はできず焦げ付き債権になってしまいます。このようなリスクを与信リスクと呼び、こうした取引に伴うリスクをマネジメントすることを「与信管理」と呼びます。

一般的な商取引では販売先に対して「与信管理」を行います。他方、建設業の場合は、資材等の原材料の費用負担が大きいことや工期が長期化することで立替資金需要が高まる傾向にあることに加え、下請先は零細企業が大半を占めるため、前渡金の発生もあることから「与信管理」の徹底を図る必要が出てきます。

(2)建設業に必要とされる外注先への与信管理

業種や業態、ビジネスのスキームによっては外注先・発注元(施主)にも与信管理を行う必要性が発生します。その目的は、信頼ある確かな工事をする業者へ外注することや、外注先や発注元(施主)の突然の経営悪化や倒産といったリスクがあれば、自社の経営基盤はもとより顧客からの信頼を大きく損ねかねません。前述の通り、建設業では施主も含め下請先に対しても、そのようなリスクをはらんでいないか調査することがあります。

外注先や発注元(施主)の与信管理をする目的はもう1つあります。外注先が零細企業だった場合、発注が大きく増えた際、資材や人件費負担などの増加に伴う資金需要の膨張が発生します。そのような場合、発注元から前渡金を支払って補うケースが一般的ですが、この場合は万が一の時に前渡金が回収できなくなる可能性があるというリスクを持っています。発注先に対する与信裏付と同じように、外注先にも前渡限度額を設定しておくことが不可欠です。

3.建設業が行う与信管理のポイント

(1)与信管理で行う2つの業務

企業が与信管理をすることは不良債権などのリスクを管理するという意味を持ちます。中でも売掛債権は増大しつつ、損害の発生は最小限に抑制するのが与信管理の最大の目的と言えます。

与信管理には大きく2つの業務があります。一つは相手先の経営状況などを客観的資料で分析する信用調査です。もう一つは信用供与最大の金額を算出して取引金額に上限をもうける与信限度の設定と運用です。これらの業務により、この相手先と取引をしても大丈夫か否か、またはどこまでの金額の範囲内で取引できるかを判断します。

(2)建設業が行う与信管理で留意すべきポイント

こうした業務を定期的に行うことで与信を見直し、その時点で最適な設定を設けます。外注先に支給材を預ける場合は、相手が材料を壊してしまったり横流したりというリスクも懸念されます。このようなケースはそれを与信とし、預ける支給材を金銭換算し下請先の経営体質を多角的に分析することで与信限度設定をします。

建設業者が外注先の与信管理をより強化するためには、与信審査担当および営業担当者の定例報告会を開催するなど、定期的なチェックが有効です。経営状況や財務状況を十分確認して慎重に検討します。新規取引時や多額の取引に移行する際、場合によっては与信限度額設定には担保の設定や経営者への個人保証を取り、貸付金に準じてしっかりと多面的な保証してもらうことが効果的です。

毎年、建設業の事業年度終了届の資料を更新して、財務内容の変化にタイムリーに対応していくことが求められます。特に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、急速な経営悪化が引き起こされるリスクが高まっている現在、より短いタイムスパンで与信を定点管理することが必要不可欠と言えます。このようにタイムリーな与信管理を行うためには、外部専門会社を活用することが大変に有効です。

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