コロナ禍において連鎖倒産を回避するための取引先チェックのポイント

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リスクマネジメント信用調査

 

1.新型コロナウイルス感染拡大の影響による倒産動向の特徴
2.地域別・業種別の倒産動向とその要因
3.リーマン・ショックと比較した倒産動向の違い
4.連鎖倒産を避けるために取引先をチェックするポイント

1.新型コロナウイルス感染拡大の影響による倒産動向の特徴

2020年8月現在で、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産は、全国で数百件に上ります。事業継続を前提としない清算型の倒産である破産が約8割を占めていると言われます。他方、再建型の民事再生法の適用が1割未満にとどまります。
実際には、消費増税等の影響から、業績不振が続いていたところに新型コロナによるダメージを受けて、経営が悪化するケースが大半と考えられます。先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっています。

倒産企業が抱えていた負債金額は、5億円未満が約8割を占めて、1000万円未満の破産事例も発生しており、中小零細事業者が中心とみられています。その一方で100億円以上の大型倒産も発生しています。小・零細企業から大企業まで新型コロナ関連の経営破たんが広がってきていると言えます。

2.地域別・業種別の倒産動向とその要因

地域別では、東京都が全体の4分の1程度を占めて、大阪府や北海道、愛知県、神奈川県なども多くみられ、上位5つの都県で約半数を占めると言われています。また業種別では、レストラン、居酒屋、喫茶店などの飲食業が最も多く、次いでホテル・旅館などの観光業、アパレル小売店などの小売業で倒産が多く発生しています。

業種別に見た倒産の要因としては、飲食業では、来店客の減少、休業要請などが挙げられます。次いでホテル・旅館などの観光業ではインバウンド需要消失や旅行・出張の自粛による影響が見られます。アパレル関連では、百貨店や小売店の休業による影響、その他、飲食業者向けなどの売上減少が影響していると言われています。

3.リーマン・ショックと比較した倒産動向の違い

2008年のリーマン・ショックの時期には、金融危機で資金繰りが厳しくなった製造業を中心とした倒産が相次ぎました。明らかに倒産の特徴が異なり、今後は、運輸や輸送、製造業など幅広い業種に波及する可能性があるといわれます。
さらに今後、業績不振に伴うキャッシュフロー不足から債務の支払いができず、不渡り倒産の多発が考えられます。

中小企業では、消費税増税後の景気低迷や、経営者の高齢化・後継者難に苦しんでいたところに、新型コロナが追い打ちをかけ、事業継続を断念するケースが増えると考えられています。収束までの時間が長引く分だけ経営者のモチベーションが低下していくことが考えられます。会社の損失・資産劣化を最小限にとどめることを優先したり、見切りをつけて「やめ時」を意識する経営者は増えていくと考えられています。

さらに経営者の高齢化を背景に、倒産に限らず「廃業」の増加にもつながることが予想されています。また新型コロナウイルスの脅威が倒産件数としてはっきりあらわれるのが、ウイルス拡大の収束後になる可能性も決して否定できません。

4.連鎖倒産を避けるために取引先をチェックするポイント

こうした新型コロナウイルス感染拡大の影響による連鎖倒産を避けるためにも、取引先を予めチェックしておくことが不可欠です。その指針として、財務状況を計算して、現状を把握しておくことが有効です。財務状況に現れる数字は客観的な状況把握に役立ちます。ここでは実際に計算できる代表的なチェックポイントを3点ご紹介します。

〇借入金対月商倍率
借入額が年商の半分を超えると、財務状況的には危険ラインだと言われています。借入金対月商倍率を求めることで、自社の財務状況のラインを把握することが可能です。

借入金対月商倍率=借入金÷月商という式で表されて、製造業や小売業の場合は3.0ほどが望ましいラインだと言われています。ほかの業種の場合は、6.0がひとつの数字的なラインです。6.0という数字は借入額が年商の半分を超えている数字になります。

〇流動比率
倒産の危険性を示す数字の1つが「流動比率」です。流動比率はリスクをはかる指標として、一般的によく使われる数字です。流動比率の算出は、次の計算式によります。

流動比率=流動資産÷流動負債×100%
流動比率は一般的に200%以上欲しいと言われており、100%以下だとリスクが高いと言われています。

〇自己資本比率
会社倒産のリスクや安全性をチェックするために使われる指標です。自己資本比率は、次の式によって算出可能です。

自己資本比率={(総資本-他人資本)÷総資産}×100%
自己資本比率は、30~40%以上が望ましいと言われています。

企業取引では、取引先への判断の誤りから債権を発生させて、リスクを被るケースがしばしばみられます。上記に挙げた財務状況のチェックに加え、①社有および代表者の資金調達力が所有不動産の担保余力と対銀行信用、②代表者の経営手腕、③業界環境等を分析し取引のリスク管理を画る事が大切です。

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