アリバイ会社との取引が懸念される場合の企業調査対策とは

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リスクマネジメント信用調査

1.アリバイ会社の実態と主な利用場面
(1)アリバイ会社の実態
(2)アリバイ会社が主に利用される場面
2.アリバイ会社が提供する主なサービス
3.アリバイ会社が摘発された事例
4.アリバイ会社への企業調査対策

1.アリバイ会社の実態と主な利用場面

(1)アリバイ会社の実態

アリバイ会社とは実態のない会社の源泉徴収票や給与明細を作成したり、在籍確認に対応することで顧客の勤務先を偽装したりするサービスを提供する会社です。

多くの場合、複数の偽装会社を用意して対応しており、数十~百以上の偽装会社を抱えているケースもあります。
ITサービス、一般事務、人材派遣、建築設計、アパレル、美容エステ、ネイルサロン、デザイナーなど、アリバイ会社が用意する偽装会社の業種・職種は様々です。金融系に強い、入居審査に強い、保育園入園に強いなど、特色があります。そのため、不動産事業者など契約する側の事業者もアリバイ会社を見抜くことは大変難しくなっています。

(2)アリバイ会社が主に利用される場面

不動産の賃貸物件の入居審査等で職業の都合で部屋を借りられない場合などがあります。収入や生活時間帯等がネックとなり入居審査に落ちてしまうケースです。

具体的には、無職の方や安定した仕事に就いていない人、事故やケガをしやすい職種といった人たちが利用するケースが多いと言われます。入居審査では年収に対する家賃比率や、会社名などが確認され、そうした条件をクリアーするために利用されているようです。

その会社に勤めていなくても、その会社に在籍しているかのように見せかけてくれるため、「在籍屋」とか「偽装会社」と呼ばれることもあります。会社名を明かしたくない場合や、保育園に子供を入園させる時の母親の勤務先として利用される事もあるようです。

 

2.アリバイ会社が提供する主なサービス

代表的なサービス内容は、あたかもその人が会社に在籍をしているかのように見せかけるものです。具体的には下記のようなサービスが挙げられます。

・電話応対
「電話応対」はアリバイ会社が行う主要なサービスです。本人宛に在籍確認の電話がかかってきた時にアリバイ会社が「只今、外出しております。ご用件をお伺いします」といった応対をします。

・在籍証明書類
各種の在籍証明書類を作成のサービスも提供しています。給与明細・在籍証明書・社員証・名刺・源泉徴収票・内定通知書などが挙げられます。

・保証人代行
賃貸で部屋を借りる際には保証人を求められるケースも多いです。必要な入居保証人を紹介するサービスです。年齢や収入などに見合った、依頼者が求める保証人を紹介します。

・ホームページ・メール
ホームページに本人名を掲載してくれたり、会社の同僚や上司を装い、本人に定期的にメール送信してくれたりします。

アリバイ会社が用意する偽装会社は、法人登記もされており、所在地にもその会社が存在しています。更に、綺麗なホームページもあり、連絡を入れると女性社員が丁寧な対応をしてくれるなど、実態がないとは思えないほどしっかりしているケースが多いようです。

 

3.アリバイ会社が摘発された事例

所得証明書を偽造して摘発されたある事例では、無職の男からの依頼で架空のインターネット事業会社で働き約数百万円の年収があったとする虚偽の源泉徴収票を作成しました。不動産仲介業者に同徴収票などを提出、マンションの契約を不正に結ばせた疑いで関与した2名が詐欺罪で逮捕されました。

また、別の事例は、勤務実態の無い架空の在籍確認対応を行いました。実際には勤務していないのに「うちで働いている」と役所からの在籍確認の電話にうその説明をして警察に逮捕されました。さらに、この事案では、架空の所得証明書を使い、住宅ローンを申し込み、金融会社から約数千万円を騙し取るという別の罪も明るみになり、関与した数名が同時に逮捕されました。

このようなアリバイ会社による虚偽の書類作成や架空の在籍確認対応で、警察に摘発された事実からも明らかな通り、「アリバイ会社」による虚偽の取引や契約行為に巻き込まれないよう、未然に対策をとることは必要不可欠です。

 

4.アリバイ会社への企業調査対策

アリバイ会社の関与の可能性がある取引では、法人登記の有無や在籍確認はもちろんですが、実際に現地調査をして確認をすることも有効です。電話による在籍確認については、特に個人情報保護法施行後からは単に在籍しているかどうかの確認に留まる事も多く、勤続年数や所属部署まで聞くことが難しくなっています。

アリバイ会社の手法は巧妙なケースが多いため、見抜くのはなかなか困難です。アリバイ会社の疑いのあるような企業調査を行うにあたっては、自社独自でできることには自ずと限界があります。

このような巧妙な手口を使う企業調査においては、企業調査を専門に行っている実績のある調査会社を活用することが有効な手段になります。企業間取引においても新規取引先が実態のない会社であったり、アリバイ会社に加担している企業であったりするリスクがある場合、大きなトラブルに巻き込まれる恐れもあります。企業間の取引をより確かなものにするために、専門調査会社の活用は非常に有効に作用し、企業間取引のリスクヘッジにつながります。

弊社(株式会社TMR)で実施している企業調査は、定性分析、経営コンサルテーションまで含んだトータルソリューションとしてお役に立つサービスを提供しています。単なる定量的・形式的な調査データの提供にとどまらず、オフィシャルな情報だけではわからない、社内での対立や離職率の高さなどの定性的・実質的な内容に踏み込んだ情報提供も行っています。

取引先企業が持つ意思決定の傾向や経営上の泣きどころといった情報を事前に把握しておくことで、今般のような経済環境の激変する環境下にあっても、迅速かつ適切な企業調査が可能となります。