お役立ち情報

1. スポットワークとは
2. スポットワークにおける雇用側の留意事項
3. スポットワークに関する問題
最近、急速に増加している働き方の一つとして「スポットワーク」というものがあります。単発、短時間の仕事をスキマ時間で働いて稼ぐといった内容のCM放送などもあり、身近な働き方として認知されてきています。副業を認める企業が増加したことや、企業に所属せず生活したいという需要の増加など、現代の社会背景によるところも大きいと思われます。
しかし、新しい働き方であるスポットワークは利便性が高いですが、課題もあり、SNSなどに実情が発信され、問題が表面化することも多くなっています。
今回は、この「スポットワーク」について、主に雇用する企業側の視点での注意するべき点や課題などについて、掲載したいと思います。
1. スポットワークとは
スポットワークは、時間単位で働く1回限りのアルバイトで、求人情報の掲載と応募機能を搭載するマッチングアプリにより、雇用主と働き手が直接雇用契約を結ぶ働き方で、アプリを提供する仲介事業者は仲介のみで雇用契約に関わることはありません。人手が足りない時間だけの求人やイベント開催サポート等の当日のみの求人など、人件費負担の軽減や緊急時の人員確保などに利用されています。
類似する働き方として、「ギグワーク」という働き方があり、単発で短時間の仕事をアプリ経由でマッチングするという点はスポットワークと同様ですが、雇用契約ではなく、業務委託契約となる点が異なります。代表的なものとして、フードデリバリーがあり、指定された商品をお店で受け取り、指定されたお客様に届ける配送依頼の受託となります。
スポットワークとギグワークの違い
スポットワークは、管理者の指揮命令に従い仕事を行うのに対し、ギグワークでは受託者の裁量で仕事を行います。また、スポットワークでは雇用責任が発生するのに対し、ギグワークでは受託者は個人事業主と同等とみなされます。
つまり、スポットワークでは、雇用契約を結ぶため、労働基準法等に則り、労働条件の明示をはじめ、就業規則の適用など、雇用責任を負うこととなります。もちろん被雇用者も同様に秘密保持義務など、被雇用者としての責任を負うこととなります。
2. スポットワークにおける雇用側の留意事項
スポットワークの利用者増加と、それに伴うトラブルの増加に対し、厚生労働省が『いわゆる「スポットワーク」における留意事項等をとりまとめたリーフレット』(※)を公表しており、そこに記載されている主な留意事項の概要は以下のようなものとなります。
※ いわゆる「スポットワーク」における留意事項等をとりまとめたリーフレット
労働基準法の順守義務は、仕事を依頼する事業主に生じる。
大前提として、仲介を行うアプリ提供企業と労働者の間には、基本的に雇用契約や業務委託契約はなく、事業主とスポットワーカーの雇用契約となるため、雇用責任は仕事の依頼を行った事業主にあります。
労働契約の成立時期
原則として、アプリに掲載された求人に応募された時点で契約の合意があったと見なされます。
労働条件の明示義務
スポットワーカーとの契約は雇用契約であるため、労働条件の明示義務があります。書面(電子書面でも可能)の交付等により明示を行わなかった場合は労働基準法違反となります。
休業や早上がりの賃金
雇用側の都合による休業や早上がりが発生した場合は、原則、休業手当を支払う義務が発生します。
労働時間の注意点
労働時間には制服や作業着が必要な場合の着替え時間や業務後の掃除などの時間も含まれます。これらの時間を加味した時間設定を行う必要があります。
賃金の注意点
予定労働時間を超えた場合の超過時間分の賃金不払いや、賃金の一方的な減額、交通費の未払いなど、明示した労働条件と異なる場合は労働基準法違反となります。また、労働時間の一方的な変更も労働契約違反となります。変更については、双方合意の上、変更履歴を残しておく必要があります。
労働災害やハラスメント
スポットワーカーにおいても、通勤途中の事故、ケガなどは労災保険の適用範囲となります。また、作業に関する安全教育を行うなどの安全義務(措置)も発生します。加えて、ハラスメントなどの職場環境の対策も社員と同様の待遇が必要です。
上記の他にも、就業規則にスポットワークに対する記載がない場合、社員やアルバイトの就業規則に則る必要があることや、求人における年齢や性別の条件付与の原則禁止など、一般の募集と同様の規則に従う必要があり、スポットワークは特別な雇用ではなく、通常雇用の一つの雇用形態であるという認識を持つことが必要です。
3. スポットワークに関する問題
スポットワークでは、単発、短時間の雇用契約という特徴ゆえのトラブルが多数発生したことから、上記のように厚生労働省がガイドラインとして留意事項を発表しています。労働時間に関するトラブルやキャンセル関連のトラブル以外にも以下のような問題も発生しています。
人材の問題
面接や履歴書などによる選考を行わず、応募先着順での採用となる点を考慮せず利用することによる問題も多数あります。例えば、遅刻や勤務態度などで、この人はもう雇いたくないと思った人が、既に掲載している他の求人に応募してきた場合、原則として応募済の仕事の依頼はキャンセルすることはできません。応募時点で雇用合意済と見なされるため、そのまま仕事に来てもらうか、自社都合で仕事がなくなったという手続きを行った上で休業手当を支払うかの対応を行う必要があります。その他、人事部門でスポットワークを手配した場合など、人物を知らずに現場に投入されたことによるトラブルもあります。
セキュリティなどのリスク問題
個人情報などの情報に携わる仕事はもちろん、いっしょに働く社員の情報や、営業手法やレシピ、技術情報など、様々な情報の漏洩についてのリスクを加味しておく必要があります。また、副業のスポットワーカーの場合などは、スポットワークの企業の秘密情報を取得されてしまうリスクに加え、スポットワーカー自身が所属する企業の情報を逆に流出されてしまうことなどにも注意が必要となります。
有資格や能力に関する問題
応募条件に有資格者の記載を行っているにも関わらず、無資格者が応募してしまった場合や、応募条件に記載された技能とスポットワーカーが考える技能のレベルに乖離があった場合など、仕事を始めるまでは確認手段がないために発生する問題があります。応募条件に該当しない場合は、契約破棄は行えたとしても、作業が滞ることになるため、対策を検討しておく必要があります。
パワハラの問題
スポットワーカーは1回限りということもあり、アルバイト従業員や管理者から仕事の手際の悪さを責められることや、雑用を押し付けられることなど、パワハラと受け取れる行為がSNSなどに多数発信されています。また、職場でのコミュニケーションに参加しづらいことも多く、孤立することもあるようです。SNSは一方的な発信のため、認識の違いなど、正しくない情報も多いと思われますが、職場によっては、あたりが強いということはあるかと思います。
しかし、スポットワーカーも1日だけの我慢と割り切ったり、評価を優先したりするため、それらの行為が表立って問題となることはあまりなく、泣き寝入りしているのが実情です。
評価制度により弱者となる問題
仕事が完了した際にスポットワーカーの評価が行われますが、採用手順を踏まないスポットワーカーは、今後のスポットワークを継続していくために、この評価を維持したい/向上させたいという心理が働きます。そのため、無茶な指示やルール違反があっても反論できずに従わざるを得ないといった弱者の立場に陥りやすい傾向にあります。
犯罪や違法な仕事の求人問題
雇用に関する問題以外として、闇バイトの募集や詐欺などの犯罪行為への加担など、単発で短時間かつ、面接や履歴書不要で応募できるという特性を活用した悪質な求人が多数掲載されていたことが問題となりました。現在は仲介アプリ提供企業による求人掲載の審査等の対策が進んでいるようです。
スポットワークは、現代社会において、雇用する側/される側、双方にとって都合のよい労働契約であり、スマホやアプリが一般化しているからこそ成立し、利用者が急激に増加している雇用方法と言えます。かつて、一時的な労働力を集める手段として日雇い派遣が流行しましたが、社会保険に加入できないことや、低賃金、過酷な労働など、様々な問題により原則禁止となりました。
そういった背景がある中、スポットワークでは、様々な問題が浮かび上がってきた早い段階で、厚生労働省がガイドラインを提示したことにより、一つの働き方として、定着できる可能性が高まったと言えるのではないでしょうか。今後、企業も労働者も双方がルールを守ってスポットワークを活用することで、人材不足解決の一助になる可能性があります。
今後の課題として、企業はスポットワークという働き方を意識した就業規則の整備や労働環境の改善、一時的な雇用者が設備を使用することに対するリスク管理など、上記のような問題があることを踏まえた上で、企業側はスポットワークを一つの雇用形態として受け入れられる体制について検討しておく必要があると思われます。
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