お役立ち情報
1. 調査委員会の設置
2. 原因の究明
3. 不祥事調査後の対応
不祥事が発覚し、初動調査を行った後、本格調査や本格的な対応を行うこととなりますが、その実行組織として設置されるのが調査委員会となります。初動調査や応急処置が事実確認や被害拡大を防ぐことに重点が置かれることに対し、本格調査や本格対応は、企業としての不祥事対応を示すものとなります。広報においても、初動では即時性が求められたのに対し、本格対応では、企業として不祥事をどのように受け取り、どのように対応するかを発信することとなります。
1. 調査委員会の設置
初動調査だけで完結するような影響の少ない不祥事を除き、初動調査で不祥事の発生を確認した場合、基本的に本格調査の実施が必要となります。本格調査を行うにあたっては、調査委員会の設置を再検討します。調査委員会の構成には、以下のような構成が考えられます。
・ 社内メンバーのみで構成する社内調査委員会
・ 調査主体を弁護士や会計士など外部有識者が担う外部調査委員会
・ 日本弁護士連合会のガイドラインに準拠した第三者委員会
・ 社内外のメンバーが共同で調査する混成の調査委員会
初動調査を引き継ぎ、より詳細に社内調査を行うだけであれば、初動調査チームを補強した社内調査委員会の設置などで対応できると思われますが、株主や取引先などといったステークホルダーに対し、一定の理解を得る必要がある場合などは、外部調査委員会を設置する方が信頼を得られやすいと言えます。また、経営者による不祥事や組織全体に関わるような不祥事においては、独立性を確保した第三者委員会や外部調査委員会を設置しなければ、公正な調査が行われていない、また不祥事に真摯に取り組む姿勢がないと判断され、信用を得られません。
調査委員会の構成が不適切であれば、隠蔽や誤魔化しを疑われることにもなりかねないため、発生した不祥事に対して、適切な調査委員会を設置することは重要です。
2. 原因の究明
本格調査では詳細な原因の究明を行う必要があります。不祥事発生の原因は元より、発生に至るプロセスや許容してしまった環境などを調査し、不祥事に関わった人物や組織を明確にするとともに、調査結果を元に様々な対応や再発防止策を検討する必要があります。
原因究明方法の具体例としては、以下のようなものがあります。
・ 客観的な証拠の収集(初動調査よりも深堀した調査)
・ ヒアリング(当事者だけでなく周辺へのヒアリングが必須)
・ 概要情報の収集のためのアンケート(直接ヒアリングが実施できない場合)
・ メールや電話による専用ホットライン(下請け業者など公に回答しづらい立場の人やヒアリング時に話せなかったことを収集する場合)
など
調査結果では、精密な調査報告資料として報告書にまとめる(エビデンスとして残す)ことが最重要事項となります。
これらをもとに以下のような対応について経営判断を仰ぐことになります。
・ 親会社や監督官庁等への報告やその対応
・ 適時開示の情報開示
・ 経営責任
・ 被害者等の当事者対応
・ 対象者等への人事処分
・ 決算対応
・ 追加調査(必要に応じ)
・ 再発防止策
など
3. 不祥事調査後の対応
再発防止策
再発防止策においては、不祥事の原因が悪意ある個人による場合は、セキュリティの強化やルール改善などで防止できるかも知れません。また、悪しき慣習や無理難題な生産計画やノルマなど、組織を根本から見直さないといけない原因の場合もあります。ですが、どのような場合であっても再発防止を検討する際は、発生した不祥事だけで検討するのではなく、同様の要因で発生しうる不祥事・リスクの検証も含めた対策を行うことが大切です。
そのため、原因究明から本格的な対応や再発防止策の策定にあたっては、リスク管理に精通したメンバーが調査委員会に参加し、現状実施しているリスク対策なども踏まえ、リスクマネジメントの観点でも検討することで、よりよい改善が行えると考えられます。
不祥事の責任
原因究明の結果から、不祥事の責任についても明確にする必要があります。不祥事を発生させた当事者やその管理者、あるいは、不祥事発生を防げなかった企業の責任など、公明正大に社内処分や責任追及を行う必要があります。
● 社内処分
当事者の処分や関係者の減給、役員の退任など、不祥事の内容と社内規定や就業規則などを照らし合わせ、適切に社内処分を行う必要があります。
特に役員など経営陣が関わる場合や世間一般に影響を及ぼした不祥事の場合は、処分の内容が株主や取引先、従業員に加え、世間に対しても不祥事をどのように受け止めているかという企業の考え方を示すことにもなりうるため、社内だけでなく、外部からの観点も含めて公正な判断となるよう処分を行う必要があります。
● 責任の追及
不祥事を起こした従業員への損害賠償、企業が受けた損失の責任として役員に対する損害賠償など、責任の追及として、民事での損賠賠償も検討する必要があります。損害賠償においては、損失の回収を目的とするだけでなく、責任の大きさを明確にすることで、社会的な信頼を回復することが大きな目的となります。
また、悪質な場合や犯罪などの場合は、刑事告訴を行うことで、不正を許容しないことを明確にすることができる反面、不祥事に関連する取引条件や営業手法などのビジネスモデルが明るみに出るなど、公開したくない情報を公にしなければならない可能性があることを考慮する必要があります。
広報活動
本格調査の結果から、追加で製品回収を行う必要がある場合や初動調査と異なる事実が判明した場合など、様々な理由で適時情報発信が必要となりますが、公に開示することで混乱を招く恐れがある場合は、一時的に関係者への連絡のみとする方が良いこともあります。但し、公にしなかった情報が漏えいした場合、不信感を抱かれる可能性もあるため、公開タイミングの調整や漏えいした場合の対策も含めて広報活動を行うことが求められます。
情報化社会の現代では、一つの情報により大きな影響をもたらしてしまうこともあるため、広報はより慎重に行う必要があります。また、方法についても、ホームページ上での掲載や記者会見などの広報手段がありますが、内容や状況によって適切な方法も追加検討する必要があります。特にホームページへの掲載については、一方的な説明となるため、世間とずれた内容や、誠意が伝わらない文書などを掲載すると、多くの批判を集めてしまうこともあるため注意が必要です。
その他の対応
● 警察の捜査
不祥事の内容によっては、被害届や告訴等により、不祥事を発生させた企業が警察による捜査を受けることもあります。捜査が開始されると、捜査協力への対応や継続できなくなる業務の発生など、臨機応変な対応も必要となるため、可能な限り事前準備を行っておく必要があります。
● 監督官庁への報告
監督官庁への報告を行い、報告後の指示に従うことが必要となる場合があります。報告においては、正確な内容を報告することが非常に大切で、監督官庁の受け取り方次第で、その後の対応が変わってくる可能性もあり得ます。
● 被害者への対応
不祥事により被害者が発生した場合、被害者に対しての謝罪や賠償を行う必要があります。そのため、調査において、被害者の被害額や被害範囲なども可能な限り把握しておく必要があります。また、加入している保険に適用できるものがある場合などは手続きを行います。
不祥事の対応では、正しくその原因を把握し、誠意ある対応を行うことと、再発防止に向けた行動を行うことが重要です。不祥事は発生させないに越したことは無いのですが、発生してしまった場合は、その場をしのぐ対応を行うのではなく、信頼を回復することと同時に、その経験から得られた自社の欠点やリスク管理を見直し、より強固な基盤を構築し成長することで、将来の発展に繋げていくことが大切です。
また、不祥事対策を通して協力し合うことで、社内メンバーの結束や外部関係者とのより深い関係を築くことなども間接的に信頼回復に繋がることと思われます。
株式会社TMRでは、業歴40年のもと、培われた豊富な人材と多岐に渡るノウハウをもってリスクマネジメント体制の構築支援を行っています。組織体制の最適化支援や内部通報制度、従業員研修による意識改革などの不祥事予防だけでなく、第三者委員会の下で行われる不祥事実態調査や調査チームメンバーの人定調査のご依頼を承っている実績もあります。独自のノウハウと倒産企業予知情報「企業特調」や「日刊誌 ウォッチ」、弁護士事務所からの多岐にわたる問題解決で得た豊富な実績を元に効果的な支援を行っています。
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