人口減少に伴う日本の未来

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1. 人口減少に伴う社会問題
2. 労働人口減少の対策
3. 解決策が見出せていない課題

昨今、少子高齢化の問題が取り沙汰される機会が増えていますが、2030年問題、2040年問題と言われている労働人口減少に伴う社会問題が目前に迫っており、すでに兆候が表れているにも関わらず、政府も抜本的な解決策を打ち出せていないのが現状です。政府も企業もこの社会問題が発生してしまうことを前提に準備をしなければならないのが実情と言えます。
今回は、この人口減少に伴う社会問題の対策について取り上げたいと思います。

1. 人口減少に伴う社会問題

2030年問題と2040年問題

2030年問題とは、2030年頃に日本の総人口の30%以上が65歳以上の高齢者となり、労働人口が不足し、社会保険負担が増加することで日本経済が悪化すると推測されている問題です。
更に2040年には、第二次ベビーブームで生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上となるため、高齢化が大幅に進み65歳以上の高齢者は35%を超え、更に75歳以上の後期高齢者も20%を超える可能性が示唆されており、より深刻な社会問題となることが予測されています。

一方、出生数は2016年に100万人を割り込み、以降も減少し続け、2024年の出生数は約73万人迄減少し、2025年の出生数は70万人を割り込むことが予想されています。2030年問題は既に回避することが難しい状況ですが、今すぐ出生数を回復させることができれば、2040年以降においては緩和できる可能性がまだあるため、政府も少子化対策を優先して取り組んでいるというのが現在の状況です。

少子高齢化が及ぼす企業への影響

既に人手不足などの問題は表面化してきていますが、今後、企業において更に人口減少に伴う人材確保の問題は深刻化する可能性が高いと思われます。

・人材獲得が困難に
売り手市場が継続し、人材獲得のために待遇面や福利厚生等の充実、仕事のやりがい等、魅力ある職場を作ることがこれまで以上に求められることとなります。

・人件費の大幅な高騰
既に初任給30万円越えの企業も出始めており、人件費の高騰を実感しますが、社員全体の給与額の上昇や優秀な社員への待遇強化など、人材確保にかかる費用は今後更に高騰することが予測されています。

・事業運営の継続が困難に
若手の人材確保が困難となり、高齢者の継続雇用なども増加すると考えられますが、退職による減少に採用が追い付かない場合や、高齢者での運用が困難な事業においては、人手不足により事業継続が困難となります。東京商工リサーチの調査では、2024年の人手不足が一因となった倒産は2013年以降で最多の289件で、前年比81.7%増となっているそうです。

人口減少の影響が大きいと思われる主な業界

・サービス業
飲食店やホテル、スーパー、コンビニエンスストアなどは採用難や人件費高騰の影響を受けやすく、セルフレジ導入やシニア層の活用などによる対策が進められています。

・建設業・物流業
人の能力への依存度が高い業界では、技術継承や育成が必要となり、若い人材の不足は大きく響きます。重機や自動車の操作などの自動化、ドローン活用なども進んではいますが、培われた人の技術を自動化することは難しく、既に技術後継者不在や高齢化などの影響が出始めており、特に建設業界では、下請け企業は一人親方などをはじめ、高齢者所帯のところも多く、労働安全上の配慮の観点からも手配に悩むことなどもあり、人材不足が最も深刻な業界となっています。加えて、建設業においては温暖化による夏場の野外作業が働きづらい職場環境と見られ、人が集まりにくい要因ともなっています。

・介護・医療業界
若い世代の人口減少に伴い医療従事者が減少する一方、高齢者の増加による需要の増加により、人手不足が既に明確となっています。今後、更に需要が増加することが予想され、外国人技能実習生の活用や介護ロボットの導入などが始まっています。

・IT業界
デジタル社会の現代では、IT需要の増加に加え、日々進化する最新技術に携わる人材を必要とするため、優秀な人材は年齢に関係なく市場価値が非常に高くなっています。技術や知識を習得するために時間が必要なのに加え、AIやクラウドなど新しい技術が次々に登場し、様々な分野で必要とされるため、人口減少に関わらずそもそも人材が不足しています。
育成にも時間を要するため、若者の採用が必要なのですが、最先端の仕事としての人気がある反面、職場環境が過酷なイメージも強く、離職率の高い業界でもあるため、働き方をはじめ職場環境の大幅な改善に取り組む企業が多くなっています。

2. 労働人口減少の対策

労働人口減少による社会問題は既に避けて通ることができない状況となっており、対応していけるよう対策を行う他ありません。対策としては、大きく分けると効率化と人材確保の2つの観点で考えていくこととなります。

効率化による対策

・業務改善とデジタル化
DX推進やAI活用などを含め、業務効率化を行うことで少ない人員で生産性を維持、改善する対策です。業務フローを見直し手順を改善するなどの基本的な効率化に加え、熟練従業員のノウハウをシステム化するなどのデジタル化により共有することで効率化が可能です。その他、業務自体の取捨選択も検討の余地があります。
昔ながらのやり方を変えることに抵抗のある企業も多いと思いますが、投入人員や工数などからコストを明確にすると意外と改善できる可能性があります。

・従業員のスキルアップ
必用となるスキルを明確にし、不足するスキルを従業員が学ぶことで効率化を行う対策です。従業員育成およびスキルアップによる報酬などは、新たな人材獲得に比べると敷居は低く、従業員のモチベーション向上にも繋がります。
社内の教育体制の改善の他、外部の講習などの活用も有効です。

・ロボットなどの機器導入
スーパーのセルフレジやファミリーレストランの配膳ロボットなど、人の作業を代行する機器の導入の他、工場のFA(ファクトリー・オートメーション)機器やVRグラスに表示される指示通りに作業を行うことで誰でも作業ができるVRマニュアルなど、機器導入による効率化も既に各所で始まっています。

人材確保による対策

・シニア層、女性、外国人などの人材活用
バスやタクシー、物流のドライバーなどでは女性の採用が増加しており、介護分野やスーパー、コンビニなどではシニア層や外国人の採用が増加しています。これまで採用が見込めないと思われていた層に対し、育成や教育の環境を整えることで、人材を確保する企業が増加しています。

・働き方改革
テレワークによる在宅勤務やフレックス制度、裁量労働など、労働者の都合にあった働き方に対応することで、地方の人材や主婦、副業などの人材確保に繋がるのに加え、働きやすい環境は離職率の低下にもつながります。

・働きがいのある職場づくり
従業員に対し、達成可能で適切な/ちょっと背伸びした目標を設定し、その目標を達成させるための継続的なサポートを行うことにより、従業員は自分自身の成長を実感することができ、自信にもつながります。また、その過程や結果により会社貢献度をはかり、正しく評価、承認を行い給与に反映させることで、従業員の更なるやりがいにつながることが期待できます。加えて、目標達成のための情報共有とコミュニケーションによって、チームワーク(人間関係)が磨かれ、チーム(会社)として課題解決に向けた組織が育まれることとなります。

・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
外部の専門家に業務を委託する対策です。外部委託では自社にノウハウや技術が残らないため、コア業務に人材を集中し、コア業務以外の業務を外部に委託することで、人材不足の対策を行います。但し、委託の際は管理が必要となるため、マネジメントスキルのある人材を割くなど、一概に委託できるというわけでもありません。

3. 解決策が見出せていない課題

建設業などの人材不足

様々な手法により人材不足を補う対策は既に多くの企業で取り組み始めていますが、建設業など技術継承や長期育成を必要とする業界では対策が難しい現状があります。
リモート操作の重機や高所作業ロボットなどが開発されているものの、技能者を代替する革新的な機器の開発にはまだまだ時間を要すると思われ、外国人の採用などによる一時的な労働力は確保できても、終の仕事として長期継続できる人材確保は困難な状況です。

過疎化

地方の中小企業などにおいては、経営者の高齢化に伴い事業承継が行えず廃業する企業が増加し、廃業による雇用の減少で労働人口が減少し、その結果、地域人口が減少して過疎化が進行するといった事例も増えています。
しかし、これは地方だけの話しではなく、少子高齢化が進む現在では東京都心23区内においても、ほとんどが高齢者で形成されている地域も発生しており、都心部での空き家問題やシャッター商店街の問題などが表面化してきています。労働人口の減少は、その地域の人口減少、ひいては地域の価値自体を押し下げ、更に人が遠ざかる負のスパイラルに陥る可能性があり、地場の中小企業の衰退は過疎化の一因になっていると考えられます。

 

現在の状況や、これから更に人口減少が進む未来について、企業はリスクとして認識しておく必要があります。その対策となる業務の効率化や新たな人材確保などは、リスクマネジメントの一環として、近い将来の予測を踏まえた上での改善や準備を進めておくことが必要です。また、人手不足で困るのはその企業だけでなく、その企業と取引のある企業も発注不可能や受注減少などの影響を受ける可能性があります。自社の対策だけでなく、自社を取り巻く環境についての情報も今後より重要となってくると考えられ、企業の経営状態や経営者の情報だけでなく、従業員なども含めた情報対策も検討する必要があると思われます。

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